掌説「小さな恋のメロディ」

掌説「小さな恋のメロディ」




掌説「小さな恋のメロディ」 《その1・沙織》

あれは高1の夏休みの時だったから、もう50年以上も前のこと。
遠い思い出だが微かに痛みを残して記憶している。
夏休みのアイスクリーム会社でのアルバイトで零下20度の恋をした。
キャンデイは10度以内だが、アイスクリームはマイナス20度以下になる
彼が「寒いから、外で待っていたらいいよ」と、優しく言ってくれたのに
私は、一度体験してみたいと思って、静止をきかずに冷蔵庫の中についって行った。
5分も経過すると冷たさに痺れを感じてきた。受け渡しをする時にアイスクリームの箱を落として
私は指を挟んでしまった。思わず悲鳴を上げてうずくまって泣きだしそうになった。
次の瞬間、彼は私の指を引っ張って口にくわえた。口内の体温が伝わって来て、冷たさ痛さが温もりに変わり始めたころ、
私は嬉し涙を流した。「痛いの?」という言葉に返事もできなかった。
耳が熱くなって顔がほてって、冷たさも痛さも忘れた。零下20度のたった2分の出来事。
あの大学生のお兄さんは今どうしているのかしら、その思い出が私の初恋だった。


 
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